ひび訳:MtG

マジックの日英対訳を日々(?)楽しんでいきます。
英文の魅力。翻訳の魅力。MtGの違った楽しさが伝わりますよう。


0018_01
Larger Than Life / 気宇壮大 (1)(緑)
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+4/+4の修整を受けるとともにトランプルを得る。
"They say Head Judge Tezzeret will be reviewing every invention at the Fair. I made sure to build something that will stand out."
—Jehvani, Vahadar artificer

「テゼレット審判長は博覧会の発明品すべてを自分で確かめるらしいんだ。だから目立つ物を作ったんだ。」
――バハダールの工匠、ジェバニー
『カラデシュ』(KLD, 1st, 2016) Common

『カラデシュ』(2016) のコモン。

緑お得意の、「巨大化 / Giant Growth」系単体強化呪文です。こちらは2マナのソーサリーで、P/Tに大きな修正を加えるとともにトランプルまで付与してくれます。

大昔に「巨大化」を見た時に、「1マナで+3/+3なんて卑怯だ!」と思ったものですが、今になって冷静にリミテッドなどをプレイしてみれば、一時強化呪文がそれほど協力無比でないことが理解できます。ましてやこれはソーサリー。コンバットトリックとして使うことも適いませんが、それでもこの修正値でトランプルもついてくるのは強力です。『カラデシュ』ではレアではあるものの、「静電気式打撃体 / Electrostatic Pummeler」や「刃の耕作者 / Cultivator of Blades」など相性の良いカードもあり、決まれば気持ちよくなれることでしょう。


カード名の"larger than life"はイディオムで、人に用いることが多いようですが、「人や物が通常よりも興味深く面白いこと, 常人ではありえないような偉大なオーラを持っていること」を意味します。"life"よりも大きいというわけですから、強いインパクトを持っている感じなのでしょうね。日本語の「気宇壮大」も「物事に対する心がまえが大きく立派なこと」(コトバンク) という意味らしく、かなりぴったりな訳です。主に人に対して用いられている点も同じです。

ただこのカードでは、イディオム通りの意味に加えて、文字通りに通常の生命体より「大きい」作品であることも、イラストから読み取れそうです。集まる人々と見比べれば、中央の馬(?) がいかに大きい構造物なのかがわかります。全高は軽く10mぐらいあるのでしょうか。さすがカラデシュは発明博覧会。


なぜこんな大きい作品を作ったのかは、フレーバーテキストに書かれています。

"They say Head Judge Tezzeret will be reviewing every invention at the Fair. I made sure to build something that will stand out."
—Jehvani, Vahadar artificer

「テゼレット審判長は博覧会の発明品すべてを自分で確かめるらしいんだ。だから目立つ物を作ったんだ。」
――バハダールの工匠、ジェバニー

テゼレット!! まさか君が出てくるとは思いませんでした。世界選手権16でのプレビュー時でもフレーバーテキスト部分だけが最後まで伏せられていて一体どんな衝撃的な文章が書かれているのかと思いましたが、これはさすがに衝撃的です。しかも"Head Judge"です。『霊気紛争』でどんな活躍を見せてくれるか今から楽しみですね。


さて、このテゼレット審判長が見てくださるということで、工匠のジェバニーさんは大きな作品を作ったそうな。それが書かれているのが原文1文目。これはなかなかクールな訳です。元々を直訳すると「テゼレット審判長が~~と、彼らは言っている」という訳になりますが、この"they say"を日本語では「らしいんだ」と訳しています。確かに英語では頻繁に"they say"とは言っても日本語で直接このように言うことは多くないですから、フィットした訳です。

1文目を軽めに訳したのに合わせたのか、2文目も割と簡素な訳になっています。原文の"make sure to do"というのは「確実に(必ず) to do する」という意味なので、くどく訳せば「私は目立つ物を作ることを確実にした」ぐらいになります。ニュアンスを組んでもう少しちゃんと訳せば「目立つ物を作るようにしたんだ」「目立つ物を作ることに決めたんだ」といった感じでしょうか。

日本語ではこの辺はすぱっと切って「目立つ物を作ったんだ」と結果な感じに訳されています。"make sure"分はうかがえませんが、確かに日本語で言うならこのような表現になりそうです。原文に接続詞はありませんが、日本語では「だから」と足しているのも読みやすさの配慮の結果でしょう。この辺の文と文のつながりの兼ね合いはいつも付きまとう難しい問題です。

原文に近い形で訳してみると、恐らくこんな感じになるでしょう。

「テゼレット審判長が博覧会の発明品すべてを品評するらしいって聞いてね。余所より目立つ物を作ろうって決めたんだ。」
――バハダールの工匠、ジェバニー

"review"はこの場合は本や映画などを「レビューする」という使われ方と同じだと思われるので、「確かめる」よりは「評価する」意味合いをはっきりさせるために「品評する」としてみました。ストーリー的には「確かめる」もしっくりくるのでこれはノリです。

同じく述語の所で"will be reviewing"と未来進行形になっていますが、これは未来の時点で進行している、という意味よりは「自然としたなりゆきで未来に~することになる」といったニュアンスなので、元の翻訳と同じく「らしい」が一番マッチします。未来進行形で丁寧を表現することもできますが、疑問文ではないのでその用法で訳すのはやめました。

2文目の"that will stand out"を一語で「目立つ」と訳してしまうと、4語も使っているのに印象が薄れてしまうので「余所より」と足してみましたが、こういう配慮は一長一短になりそうです。1文目と2文目のつながりはフィーリングです。


『霊気紛争』のプレインズウォーカーは白のあじゃにゃんと青黒のテゼレットとにらんでいるのですが、どうでしょう。

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