ひび訳:MtG

マジックの日英対訳を日々(?)楽しんでいきます。
英文の魅力。翻訳の魅力。MtGの違った楽しさが伝わりますよう。


0018_01
Sublime Exhalation / 崇高な吐露 (6)(白)
ソーサリー
不抜(この呪文を唱えるためのコストは、対戦相手1人につき(1)少なくなる。)
すべてのクリーチャーを破壊する。
Exhale, and let the winds carry your soul for all eternity.
ゆっくり吐いて、魂が風に流れるに任せなさい。
『統率者2016』(2016) Rare

『統率者2016』(2016) のレア。


白定番の全体除去に、不抜がついた一枚です。統率者戦は通常4人対戦なので、この場合最小で(3)(白)。シングルシンボルの分だけ、あの「審判の日 / Day of Judgment」をも超えるコストパフォーマンスになります。

とはいうものの、(2)(白)(白)の「神の怒り / Wrath of God」は再生を許さず、近年の基準となっている(3)(白)(白)の全体除去達は何らかの追加効果を持っているのが普通です。「すべてのクリーチャーを破壊する」だけだと少し物足りないのが実情でしょうか。

単純なコントロールの全体除去枠というより、死亡誘発にからめたコンボデッキのパーツ水増しなどに充てられそうです。先週の記事でも書きましたが、統率者戦は同名カードを1枚しか入れられない関係で同じ役割のカードはいくつあっても困らないので、細かい入れ替えなどにビルダーの腕が問われそうです。筆者は統率者戦を嗜んではいないのですが、カードを見るたびに面白そうなものばかりでいつかはやってみたいですね。


効果はまあまあなのでしょうが、それよりもカード名とイラストのインパクトがすごいです。砦と思わしき場所で、男女問わず兵士たちが膝をつき空を見上げ、口から魂と思しきものを吐き出しているその様には、むごさとも違う空恐ろしさ、一種肌寒いものすら感じます。

英語カード名の"Sublime Exhalation"は、"sublime"がそのまま「荘厳な, 崇高な」という意味ですが、"exhalation"は"exhale"/「(息を) 吐き出す」という意味の動詞が名詞になっているものです。深く考えなければ「呼気」「吐き出し」などと訳されそうですが、そこに充てられた「吐露」という言葉がまたイラストにマッチしています。自らの魂を湧き上がるように吐き出してしまうその情景と、「とろ」という語感の響きがイラストへ印象を加えているように感じます。


フレーバーテキストも結構不思議です。

Exhale, and let the winds carry your soul for all eternity.
ゆっくり吐いて、魂が風に流れるに任せなさい。

冒頭、命令文の"Exhale"を「ゆっくり吐いて」と訳したのは妙訳です。"exhale"そのものには「息を吐く」という意味しかないはずですが、"Exhale"とゆっくりと、ささやくように発されたそのシーンを思い浮かべれば、「ゆっくり」と付けるのはむしろ自然です。

一方で、"for all eternity"/「永遠に」というフレーズは訳文からは省かれています。原文の直訳は「風があなたの魂を永遠に運ぶことを許しなさい」であり、吐き出した魂が永遠にあたりをただようことを示しているように感じます。"let O C"はだいたい「任せなさい」と訳すのでそこは問題ないですが、どうして"for all eterniy"を訳出しなかったのでしょう。

訳者の気持ちは聞いてみないと分かりませんが、訳文を見ると「永遠に」という言葉を無理に付け加えるのは確かに蛇足に思います。英文を見て"for all eternity"の存在を知った私たちは、「魂が風に流れる」というその言葉の裏に、永遠を感じ取れれば風流かもしれません。


クリーチャーが大量に並んだ状態の統率者戦でこれを撃てば、対戦相手もこんな感じの顔になるでしょうか。

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